【口福のおすそわけ 454】お花見団子のナゼ? 竹内美樹


 今年は平年より、桜の開花・満開ともかなり早い。やっと飲食を伴うお花見が解禁になったのに、東京では残念ながらすでに散り始めているが、桜前線の北上とともに、これから見ごろを迎える地域も多いだろう。

 手前みそだが、筆者が役員を務めるお弁当製造販売会社のデパ地下店舗では、この時期テレビの情報番組に取材を受けるほど、お花見弁当が注目を浴びる。お料理の一番人気は、桜花の塩漬けを載せたピンク色の桜豆腐だが、3色のお花見団子の人気も根強い。

 このお花見団子、案外ギモンが多い。お花見とお団子がセットになったのはいつごろからなのか? ナゼあの3色なのか? そして、串に刺す順序は決まっているのか?…。というワケで今回は、お花見団子の不思議に迫ってみることに。

 まずは、そもそもお花見自体がいつごろ始まったのかを調べてみた。花を愛でる行事は、奈良時代には貴族の間で行われていたようだ。だが当時は花といえば梅を指し、桜に代わったのは平安時代に入ってから。最初に文献に記録されたのは、平安時代に嵯峨天皇が開催した「花宴の節」。

 その後、鎌倉時代に入ると、貴族だけでなく武士たちもお花見に興じるようになる。一方、農民たちは古くから、春に山から下りて来る田の神様が宿ると信じられていた桜の木の下で、皆で杯を交わしごちそうを食すことで、豊作祈願をしたそうだ。お花見が町民にも広まり、娯楽として大衆化したのが江戸時代。8代将軍徳川吉宗が、飛鳥山、御殿山、隅田川堤、小金井堤などに桜を植え、桜の名所が増えたことも要因だ。

 では、お花見団子の登場はいつごろか? 豊臣秀吉主催の「吉野の花見」は、徳川家康や伊達政宗ら武将も集う政治的な物だったようだが、秀吉晩年の「醍醐の花見」では、参加者約1300人のうち、息子秀頼と前田利家以外、北政所はじめ全員女性。秀吉は彼女たちのために、全国から銘菓を取り寄せ振る舞ったとか。諸説あるが、これがお花見に甘味が付き物となった由来とされる。庶民にそんなぜいたくはできないから、江戸時代には屋外でも食べやすい団子が定着したらしい。

 3色の意味だが、コチラも諸説ある。縁起物である紅白に、邪気をはらうとされる緑を合わせたという説。ピンクが桜や陽光、白が名残雪、緑は新芽を表し、3色で春を表現しているとする説。もう一つの説は、桜色は春、白は冬、緑は夏を表すといい、秋の色がないのは団子を「飽きないように」と、「商いが繁盛するように」を掛けたシャレなんだそう。いかにも江戸っ子らしい言葉遊びである。

 色の並び順は、赤(ピンク)・白・緑と決まっている。赤いつぼみが付き、白い花が咲き、緑の葉が育つ…つまり、桜が成長していく様子と同じなのだ。何とも風流だ。

 昔は上新粉に、着色料でなく赤シソやヨモギを練り込んで色付けしたため、3種の風味が楽しめたそうだ。これだけ奥が深いお花見団子、その伝統を未来へ継承してもらいたいと願う。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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